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【ライブレポート】SOUND DOOR -DAY2-[2020/12/01]

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 関西のコンサートプロモーター・サウンドクリエーターと旅行会社JTBによる音楽イベント『SOUND DOOR』。

 『音楽の入り口』と題された新しい形のライブエンタテインメント2日目に登場は、シンガーソングライターの森 恵。2013年には日本人として初の米国ギルド・ギターズとエンドースメント契約を果たしている、ギルドを代表するアーティストのひとりだ。

 昨日に続き肌寒さを感じるこの日、バーベキューを終えた観客たちが見つめる中、静かに『愛のかたち』からスタート。やわらかくも温かいサウンド、しっかりとした太さのあるパワフルな歌声は低音から高音域まで広く伸びもよい。「9、10ヵ月ぶりぐらいのお客さんを入れたライブで、大阪は1年4ヵ月ぶりですね。今日はソーシャルディスタンスで、マスクもしてもらって、いつもと違うライブの楽しみ方をしてくださればと思います。みんなマスクしてる方が温かいんじゃないかな(笑)?」と笑顔で語り、「なんか火が消えてきたから薪をくべようかな~」と合間に薪をくべながら観客と話す場面も。中には、大きな声がだせないため“10周年おめでとう”と書いた紙を掲げるファンもいて、「ありがとうございます、うれしい。今年10周年で大阪のみなさんや全国のみなさんにありがとうってツアーに回りたかったんですけど…。叶わない年でしたが、そんな中でいろんなチャレンジをしたいと思ったんです。だからこうやって今回イベントを企画してくださり、本当にうれしく思います」とほのぼのとした和やかなムードが続いていたが、「ここからはちょっと曲に集中していきたいと思います」と語るや一転。透き通るようで切なさと力強さの緩急が見事な歌声が、ぐっと心を締めつけ揺さぶってくる『月夜』、『I think of you』を演奏。巧みな弾き語りのテクニックはさることながら、歌詞を情景として描き出せる豊かな表現力には驚かされる。あちこちから感嘆の声が漏れ聞こえ、晩秋の野外でしっとりとした楽曲を聴くのも気持ちがいいものだと思わせてくれる。そして「みんな一緒に温まっていこうか」と両足や両手を使ってのレスポンスを伝え、パワフルなロックスピリッツを感じた『オープンカー』を。会場との一体感を上手く作り上げたあとは、自然と手拍子にて応える観客たちに、さわやかなボーカルで聴かせるポジティブなナンバー『星に願いを』、そっと寄り添い想いに同調してくれるような優しさを感じる楽曲『蒼の向こう』を丁寧に紡いでいく。「みんな、バーベキューやったんですよね? 私も楽屋のテラスでお肉を焼きながら、今日のライブ楽しんでもらえるといいねって話をしていて。私のスタッフさんは無茶ぶりが多くて、本番の30分前に「この曲を」とかって言われたりするんです(笑)。今日もぶちかましてきまして(笑)、みんなが知っている曲を準備したので今日にぴったりの曲を歌ってみようかなって思います」と『寒い夜だから・・・(TRFカバー)』、続いて「みんなにクイズ、この曲わかる?」と『BAD COMMUNICATION (B’zカバー)』を! それぞれが名曲には違いないが、彼女が歌い演奏するとまた違った趣になりオリジナリティが生まれる。当たり前のようでいて、それが実にカッコイイ。鋭さや危うささえも兼ね備えたようなエネルギッシュなボーカル力に、本当に聴き入れる声だなとあらためて感心せざるをえなかった。

 後半に差し掛かり、疾走感のある軽やかな『Going there』を披露し、「コロナになってから新しいことや、やらざるを得ないこともあったし、我慢しなくちゃいけないこともたくさんありましたが、そういった制限があったからこそ配信ライブとか今日のこの大阪のイベントライブも生まれたのかなって思っています。まだどれぐらい続くのか不安だし分からないことだらけですけど、立ち止まっているだけじゃなくて、次に繋がることをやろうっていう“人の考える力”が素晴らしいなって。それを発信してくれる人や、そこに集まって楽しもうって来てくれるみんながいてくれることが、私にはもっともっと頑張ろうって思えることです。次に歌う曲はそんなコロナの中で作った曲です。大阪はずっと音楽をしていく中で欠かせない場所だし、いつも温かくサポートしてくださってる街なので、必ず帰ってくるから、その時はみんなで声を張り上げて歌ってね」と『Stay Home』。今を乗り越え、未来へと繋がっていくような前向きになれるメッセージソングに心地よい躍動感を覚える。その後も『いつかのあなた、いつかの私』で穏やかな時間を過ごさせてくれ、「来年とかね、またここであったらいいよね。今年はしんどい思い出がいっぱいあると思うから、ひとつでも少しでも多くの楽しい思い出を増やそうと作ってくれた今日のイベントに、私も参加させてもらえてすごくうれしいです。みなさんに会えることが数か月ぶりで緊張もしていましたが、温かく迎えてくれてありがとう」。本編ラストは同曲もステイホーム中に作った楽曲だという、彼女らしさが表れたミドルテンポの『Cozy』を披露。

 アンコールでは「来年も活動を止めたくないし、みんなに会える時間も作りたいと思っているので、大阪に帰ってきます。ありがとうございました!」と『鮮やかな旅路』を。「みんなと過ごせて本当に幸せでした。また会おうね必ず!」。
 何度も何度も約束を交わし笑顔で手を振る彼女の歌声、ギターの音色、世界観には力がある。決してトリッキーでも派手ではなくても、普遍的な美しさと安心感がある。強引に前を向くことを進めるのではなく、ゆっくりとでも自分のペースで一歩ずつ進んでいいんだという気持ちにさせてくれるのだ。まだ先行きが見えない今の状況にも、いつか必ず希望の光が指すことを提言してくれているような、そんな心に沁み入るライブだった。

 2日間を通して行われた新たな形のライブエンタテインメント『SOUND DOOR』。まだ制限がある中での開催ではあったが、作り手とアーティスト、観客たちの笑顔が溢れる素晴らしいイベントは、エンタメの歴史に確かな歩みを刻んだに違いないと思えた特別な2DAYSだった。

小西 麻美