Information

一覧に戻る

【インタビュー】番匠谷紗衣[2021/03/15]

この公演をはてなブックマークに追加 友達に教える

◎2020年、世の中はコロナ禍でしたが、番匠谷さんはそれ以外にもいろいろなことが。地元・大阪に戻り自主レーベルを設立されましたね。

東京にいる時は事務所に所属してたんですけど、事務所とも話し合って一旦大阪に帰って自分を見つめ直す時間を作ることにしました。上京時にはみんなに見送ってもらって、二度と帰ってけーへん!くらいの勢いだったんですけど、あれ、まだ2年経ってへんけど?っていう(笑)。実は東京に行って割とすぐに大阪に帰りたいなとは思ったんですけど、大阪に帰るのは逃げや。東京におらないかんって思ったりして。それが自分を苦しめる状況になってしまっていたんですよね。でも今は、私はいびつでも粗くても自分のペースで一個一個作っていくのが好きなんやってわかって、自分に合ったやり方を見つけようと思えたし、それを見つけたコロナ期間になりました。一旦大阪に帰ったらって言ってくれた事務所の方に感謝しています。

◎東京では自分を見つめる時間が減ってしまったんですか?


東京では私だけの自分じゃなくなって、でもそれをうまくやれるだけの自分じゃなかったというか。それができる人はほんまにすごいなって思うし、できることならそうしたかったっていうのも正直あるし、私もいつかそうできるようになるか、一生できないのかはわかんないですけど、これやっていいかな? これやったらあの人はどう思うかな?とか、これしたいけど、これすることによってこれがこうなるかな?とか、そういう些細なことの積み重ねで自分がどんどん小さくなっちゃって、何もできないようになって。それが関わってくれる人に対しても、音楽に対しても、すごく申し訳ない気持ちになったんですよね。でも今は自分が一番楽しんでみよう!って、音楽をやり始めた時の気持ちでできてますね。

◎ちなみに大阪に戻ったらレーベルを立ち上げようと考えていたんですか?


全然思ってなかったですね。大人をうまく利用したらいい…みたいなのが嫌で(笑)。それで対等に接することができる人とだけおりたいと思ったんですよね。まだまだこんな年齢やし、何言ってんねん!って思われると思うし、仕事とかやったらそうはいかないと思うんですけど、音楽に関してはそれでいいんじゃないかって思って。そういう尊敬できる人、カッコいいと思う人とだけでやっていける場所がほしいなって思って、レーベル作ろうって思ったんです。所属してたのが大きい事務所とかレーベルやったから、そこから抜けることでファンの人ががっかりするんじゃないか?っていうのはあったし、実際のところはわからないけど、でも絶対今からの方が売れたる!って思ってます(笑)。もう衝動がほんまにヤバい。やりたいことを全部やってやろうと思ってるから。

◎具体的にはどんなことですか?

実際やっていることで言うと、アメリカのライブに出た時に知り合ったケニー越前さん(ギタリスト)に私の曲をリアレンジしてもらって、音楽仲間でカメラをやってる方にMVを撮ってもらったりとか。お金とか関係なくとにかくやりたい事をやると楽しいなって思ったし、子どもたちの福祉の活動もしてて、それにも力を入れられるようになりました。でも好きなものだけ作って、ただの自己満足だけにならないように…音楽で影響力を持てるように、どういうものが刺さるんやろう?って試行錯誤して音にもこだわって作ってます。だから次のアルバムがめっちゃ楽しみなんですよ! いろんな色がありそう。前からずっと好きなアーティストの方にアレンジを頼んだり、デザイナーさんも、MVの監督さんも、ダンサーさんも、バンドメンバーも、アレンジャーさんも、全部自分で頼んだりして。今は何十人もの人たちと常に連絡を取り合って一つひとつ作ってる感じなんで、正直、手に負えなくなってきてます(笑)。

◎すごい行動力!

4月3日(土)にある、なんばHatchのワンマンもそうなんですよ。直接自分でなんばHatchに行って、めっちゃ分厚い書類もらって来たんです。で、その日にお世話になっているサウンドクリエーターの中原さんに話をしたら、それはな、番ちゃん。一人でやるのは大変やで!って言われて、ほんまやわ!ってなってそこは中原さんにお願いしようと思いました(笑)。

◎何でも自分でできるようになりそうですね。

マネージャーみたいな人が必要って言われるんですけど、また人に任せてたら同じことを繰り返しちゃうんじゃないか?みたいな不安もあるので、一回全部自分でやってみて把握してからって思ってます。高校の時もセルフマネージメントでやってはいたけど、メジャーを経て、そのレベルのやり方を見させていただいたから、今度は自分でやってみようと。そうするうちに、あの時こうやからマネージャーさんが怒ってたんやとか、ほんまはこうしてほしかったんやとか、もう全部紐付いて、やっぱり自分で大変ながらもやってみることで、わかることがいっぱいあるなって思いましたね。それに今ならまだ初めてだし、失敗も許してもらえるかもしれないから(笑)、やってみてムリ!って思ったら誰かにお願いしようって思って頑張ってます。

◎人としてすばらしい!

でも、もともと欠けまくってる人間なんで。欠落×100ぐらいヤバいんですよ。人としての仕組みが成り立ってない。今日も傘、3本なくしてるし(笑)! 歌詞考えてたら、電車の乗り換えのたびに傘を忘れちゃって。毎日そんなんやから一緒にやってくれる人には感謝しかないです。

◎さて、2月24日発表のシングル「glow」の話も聞かせてください。

「glow」は東京に行ってすぐに種ができてたんですけど何年も放ってて、それをふと思い出して歌詞も全部書き換えたんです。“軽々しく捨てられるもので出来てる世界を見ていたから”のところがすごく気に入ってるんですけど、今思えば東京に行くまでは自分がどうなってもいいと思ってたし、周りのことも大事に思ってなかったなって思ってたんですね。でも東京で関わった人たちがほんまに大事で。その大事な存在ができたからこそ、自分のことも周りのことも世の中のことも、すごく重みのあるものに感じられるようになったんです。そんな大事な時間を東京で過ごさせてもらったから、感謝や大事やったことを認め、怒りとか自分の不甲斐なさとかそういうのから一歩踏み出さなあかんなって。そういうものを過去として強さに変えて進み出そうって気持ちがこもってると思います。でも実際にはスラーって書けたから、今こうやって話すまでは深くは考えてなかったですね(笑)。

◎お気に入りの“軽々しく捨てられる~~”の一節は悲しい感じがしたので、ダメージがあったのかな?と思いました。

いやもうダメージ、ダメージ、ダメージですよ。毎日、生きてるだけでダメージくらうんですよね。今朝も髪の毛めっちゃ頑張って巻いたのに雨だし、傘も忘れるし(笑)。

◎でもそんな日常の感情や思考の蓄積が詞になるんですよね。

そういうのもありますね。スラーって書いたって言いましたけど、常にすごく考えてるから、もうずーっと考えてるからですよね。夢の中でも。でもみんなそうですよね。

◎そしてそれがあふれて曲になる。

だからどんどん経験をしていかないと何もたまっていけへんから、動き続けてないと何も生み出されへん。どうしよ! 体力がもたない。そう、だから最近キックボクシングを始めたんです。体力をつけようって思って(笑)。

◎なるほど(笑)。そして「glow」でほかに気になったのは、ボーカルとキーボードと少しのコーラスだけで静かに続く1コーラス目です。

最初は、何のジャンル? ジャズ⁇ってなりますよね(笑)。これはアレンジをしていただいたmarsh willowさんの提案でした。marsh willowさんとはカッコいいと思うポイントが似てるなって私は勝手に思ってるんですけど、 “また1人に戻るんだろう” (1コーラスの終わり)でトラックが…ビートが始まるんですよ。ここからいくのがカッコいい!

◎本線に合流するような感じがゾクッとします。さらに今作はご自身が昔から好きだったオルタナティブやR&Bのサウンドを取り入れられていますよね。

そうです。marsh willowさんはそういうジャンルの方で、間に誰も入ってないんですよね。私とトラックメイカー(marsh willow)さんだけ。本来はそうなんでしょうけど、以前はディレクターさんとか、マネージャーさんとか、事務所の方とか、5、6人は関わっていたと思うんです。逆に、そういう方がいなくなったことで、これめっちゃむき出しやん!って思って、一瞬、怖っ!ってなりました。でもそれにはその良さがきっとあるんやろうなって。

◎番匠谷さんの純度が高いという点がいいですよね。

めちゃくちゃ高いです。純度100%です。だから曲を褒めてもらった時はほんまにうれしい。

◎今日までにどのような曲への反応を感じていますか?

大学生とか同年代の人が聴いてくれることが多いですね。やっぱり私も中高生の頃から今まで音楽がないと生きていかれへん人で、音楽に支えられて日々がどうにか回っていたところがあるから、そういう人たちの日々に私の曲が混ざってほしいんですよ。だからもちろん今後ももっと知ってもらいたいと思いながら活動していくとは思うけど、誰もがわかるようなわかりやすい曲を書こうってよりかは、音楽を必要としている人にちゃんと響くようなものを書こうって。ただそういうのは、どんどん鋭く狭くなっていくかもしれへんなって感じてて、そこに振り切るのは勇気が要ることやと思うんですよね。でも私が聴いてきた、神聖かまってちゃんとか、大森靖子さんとかの音楽がそうやから、勇気を出して、むき出しで鋭くやっていこうかなって思います。

◎ますます今後が楽しみです。楽しみと言えば、先ほど話に出た4月3日(土)のなんばHatchでのライブ。実に736日ぶりのワンマンです!

お~、736日ぶり。自分的にも、今、自分がどうなってるのかがもう未知なんで(笑)、全部出すだけです。考えてきたこと、やってきたこと、頑張ったこと、これからやりたいこと、みんなに伝えたいこと、すべてシンプルに出せたらなって。その日限りのライブです。また次はいつできるかわからないんで、とにかく見てほしいです。


文:服田昌子


LIVE INFORMATION


番匠谷紗衣 ワンマンライブ 2021
meet "Fill RECORDS"

2021/04/03(土) なんばHatch