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【インタビュー】藍井エイル[2019/11/27]

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――11/27にシングル「星が降るユメ」を発表されましたが、その表題曲はアニメ「Fate/Grand Order -絶対魔獣戦線バビロニア-」のエンディング曲。アニメの世界観を表す歌詞は藍井さんが手がけていますね。

歌詞はアニメに寄り沿ったものにすべきだと思っているので作品の内容を把握して、さらに(アニメのモチーフになった)「ギルガメッシュ叙事詩」(古代メソポタミアの文学作品)も読んで……。そこからいつも携帯にメモしている思いついた言葉やセンテンスから使えそうなものを選んで、アニメの世界に寄り添いつつも自分なりの言葉で「Fate/Grand Order -絶対魔獣戦線バビロニア-」に近づけるようにしました。

――ギルガメッシュ叙事詩まで! 神話はもともと好きなんですか?

神話には興味ありますね。実はエイルという名前も北欧神話の女神の名前です。ギルガメッシュ叙事詩は主にギルガメッシュ(「ギルガメッシュ叙事詩」の主人公である古代メソポタミアの伝説的な王)が出てくる部分を読んだので、全部を把握できたわけではないんですけどね。

――その「ギルガメッシュ叙事詩」がモチーフのアニメ「Fate/Grand Order -絶対魔獣戦線バビロニア-」はどんな内容なんですか?

アプリのゲームになっている作品で、特異点というものを見つけて修正して人類が滅亡しない未来を作っていくっていうものなんですよ。何章もあるんですけどいろいろな出会いと別れを繰り返して人間関係に飲み込まれたりしながらっていう……ちょっと複雑かもしれないですね(笑)。基本的には、アニメに描かれているのはギルガメッシュとエルキドゥというキャラクターの関係性ですが、その出会いと別れについては絶対に歌詞に書きたいって思ったんです。これも話し出すとすごく長くなるんですけど(笑)、エルキドゥは女神に作られた人形なんですよ。その人形がどんどん人格を持つようになってギルガメッシュと出会う。で、その時にギルガメッシュは星が降る夢を見るんですけど、それはエルキドゥとの出会いの知らせだったんです。

――それで曲名が「星が降るユメ」。

そうなんです。で、エルキドゥとギルガメッシュは仲よくなるんですけど、その関係性はのちに壊れてしまう。そしてアニメではエルキドゥはまた作り直されて、今度はギルガメッシュを殺しに行くことになるという、すごくせつない内容なんですよ。そのせつない世界観を歌詞で表現できたらいいなと思っていました。

――運命などを感じる大きな世界を映し出した歌詞は、日常的なことではないので書くのが大変だったのでは?

私は活動休止した期間があったんですが、正直休むことは私にとってすごく怖いことだったんです。休む勇気がなくて結局、体調を壊して休んだんですけど、休みを経て落ち着いて、再び歌に近づくことができた時、やっぱりあの時に休みを選択したのは間違いじゃなかったんだって振り返ることができたんです。それが「星が降るユメ」の歌詞の“間違いなんて きっと無いはず”っていうサビになっています。だからそんな自分の経験も散りばめてリアルな部分も入れつつ書きました。

――そして曲はそんな言葉たちが際立つもの。静かなパートも多いです。

ライブで緊張しますね。イヤモニつけながら静かだな~緊張するな~って思ってます(笑)。静かだとお客さんも曲に入り込むので、そこで私の集中力が切れないように、素にならないように気をつけていますね。

――レコーディング時はどうでしたか?

私はわりとまったりレコーディングするタイプなんです。自分の声を聴くと眠くなっちゃうんですよね(笑)。だからいつもコーヒータイムをはさみながらです。この曲を作ってくれたTAMATE BOXさんはもともと友達で今回ディレクションもしてくれたんですけど、TAMATE BOXさんに“はい、やるよ~!”って言われてようやく腰を上げるという感じになってました(笑)。

――穏やかな現場(笑)。ちなみに、藍井さんは「Fate」シリーズのキャラクターではギルガメッシュが一番好きとお聞きしましたが、ヒールが好きなんですか(笑)?

ギルガメッシュは悪とも言い切れないんですよね。でも、めちゃくちゃ横柄です(笑)。自分がそういうタイプの人間じゃないから、ギルガメッシュを見ているとカリスマ性があってブレないなって……。ブレない人ってカッコいいじゃないですか。でもこんなに横柄な人が現実の世界にいたら、ちょっと怖過ぎて近づけないです(笑)。

――あと藍井さんは鬱ゲーがお好きとか? ダークなものが……。

……好きですね(笑)。ホラーは苦手なんですけどね。

――闇があるんですか(笑)?

闇を持っているというより、ダークな世界をのぞいているって感じですね。自分自身はプラス思考だしハッピーな感じなんですけど、ダークな世界に興味があってのぞいてみたいなって……。

――でも2曲目の「インサイド・デジタリィ」はちょっとダーク(笑)。藍井さんのTwitterには、引きこもり体験を書きましたというツイートがありました。

Twitterでは引きこもり経験を書いたって過去形になってはいますが、実は今も引きこもってますね(笑)。ゲームをしてYouTubeを見てNetflixを見て家から一歩も出なくて、歩数計を見たら200歩みたいな……。どんどん外に出なくなって買い物もAmazonでポチるみたいな感じです(笑)。

――現代はそういう人が多そうですよね。

ですよね! このテーマなら意外とみんなに共通する部分があるんじゃないかなって思って書いたんです。

――鬱々とした引きこもりではなく、比較的ポップな引きこもりの詞だったんですね(笑)。

そうですね(笑)。(詞世界は)引きこもってばかりで外の世界をわかってないけど、それでも何かを変えなきゃ見える世界も変わらないよなってところからリアルな世界につながって、それで街に出るけどハッピー過ぎないようにしたいなと思ったんです。この曲のキャラクターは少し皮肉っぽくした方がいいんじゃないかなって……。それで“やっぱうるさすぎるな”っていう歌詞を書いて、それに続くのは、文句ばっかり言ってるけど、でも心がちゃんと揺さぶられている瞬間があるっていう終わり。この終わり方が難しかったですね。

――絶妙なバランスの終わり方ですよね。そこの“文句が漏らせるのも 決断が出来たから”という歌詞も印象的。この言葉はどんな経験から出てきたんですか?

ここは体験ではなく想像ですね。主人公にはこういう言い回しが合うのかなと……。もし全部の歌詞が私の人格だったらもっとひねくれてない感じになって、最後も外に出た!みたいな(明るい)表現で終わると思うんです。そこが曲と実際の私が違うところ。私も引きこもったりしてるけど、ここまでシニカルではないですね。

――そうすると、藍井さんはストーリーテラーの要素が強そうですね。

確かに歌詞は物語性が多いかもしれない。今、気づきました(笑)。いつも目指しているのは、起承転結のある歌詞なんですけど、特に「インサイド・デジタリィ」は音符の数が多いので差し込める言葉の数が多くて(起承転結もつけやすく)、そういう意味でも歌詞は正直書きやすかったです。サクサクッと2時間ぐらいで書けました。

――そしてそんな言葉たちがのるのはデジタルサウンドです。

曲を最初に聴かせてもらった時にデジタル感が強いなって思ったんです。そしてどこかコミカルな感じにも聴こえて……。それで、デジタル、デジタル、デジタル……あ、引きこもりだ! ゲームとかデジタルのなかに引きこもっている人のことを書こう!!ってなったんです(笑)。歌詞には実際に引きこもってる自分が見た景色が書いてありますね。

――“カーテンが 閉じたままの空間を過ごしちゃう”とか?

はい。カーテンはいつも閉めているんですけど、それはテレビの画面が反射してゲームできなくなるから(笑)。だから(歌詞には)“窓があったって無くたって何にも変わらないよ”っていう……(フレーズがある)。

――そういう日もありますよね。そしてダメ人間感にさいなまれる(笑)。

すごくわかります! それで“自堕落とわかっても”っていう歌詞が……。Uber Eatsばっかり頼んで自炊もしなくてゲームばっかりしている時に自堕落だな~って思いますね(笑)。家の中にずっといて誰ともしゃべらなかったりするんで、外に出てその日初めてしゃべると声がガッサガサの時があります(笑)。

――生々しいエピソード(笑)。では、3つ目の収録曲「Story」のことも……。これはデビューのきっかけになった曲で、ピコさんのカバーですね。

音源化するのはこれが初です。「星が降るユメ」もデビュー曲の「MEMORIA」も、「Fate」シリーズのエンディングテーマなので、今作を作ることになった時に原点回帰というのがテーマになるかなって思えて……。今思えば、8年ぐらい前にピコさんの「Story」に出会えたから今の自分があるし、ここで原点を見つめ直すという意味でも、今回「Story」をカバーさせてもらって、改めてピコさんへの感謝を表せたらいいなって思ったんです。

――その約8年前の動画を拝見しました。若々しかったです(笑)。

恥ずかしい! 今と発声も違うし弾けてる感がありますよね(笑)。当時は歌手の夢を諦めかけていたんですよ。でもその頃は動画サイトに歌っている動画を投稿するのが流行っていたので、私も投稿したらデビューができて……。それは結局、夢を諦め切れなかったからの行動の一つだったと思います。でもあの時、夢を諦め切れなくて本当によかったなって思いますね。

――そう考えると今作の3曲は、藍井さんの今日までの歴史を感じられる作品ですね。では最後にツアーについて……。まず現在はライブハウスツアー中ですが、いかがですか?

今回はアルバムを掲げるツアーではないので自由な選曲で、久しぶりに歌う曲やなかなか登場させにくいシングルのc/w曲などを入れながら、代表曲も散りばめています。あと、会場がライブハウスなので攻撃的な曲が多い……というか、多くしました(笑)。

――調べてみたら、藍井さんはヘッドバンギングなどアグレッシブなパフォーマンスもされるんですね。

それはウィキペディア情報ですね(笑)。3rdアルバムの「D'AZUR」のツアーはまさにそんな感じでした。首への負担があるので控えめなヘッドバンギングではあるんですけど、歌っていると楽しくなって勢い余ってついつい。あ、「インサイド・デジタリィ」を作ってくれたバンドメンバーでもある篤志さん(G)が、以前教えてくれたんですけど、(ヘッドバンギングは)腰からいくんだよ。そしたら首にこないから!って……。で、なるほど腰からね!みたいな感じになったんですが、結果バンドメンバーも私も、全員が腰が痛くなって、本末転倒じゃん!っていうことがありました(笑)。

――仲いいですね(笑)。そして来年5月からは新たなホールツアーが始まります。

次はホールツアーですが、そうは言っても一体感のあるライブにしたいなと……。それが楽しいと思ってくれているお客さんも多いだろうし、私自身もずっとそうやって、やってきたので、そんなライブができたらいいなと思っています。

――関西では5/6(水・祝)に奈良公演、6/7(日)に神戸公演が……。関西のライブではどんな思い出がありますか?

関西に来たら100%で「551」の豚まん(「551蓬莱」の大阪名物)を食べるんです。で、過去の大阪ライブでその(有名な)CMのマネをしよう!ってなったんですね。“551のある時~”“ハハハハ!”、“551のない時~”“……”っていうCM(笑)。関西のノリのよさは最高過ぎでした! あれ、またやってみたいですね(笑)。

――サービス精神たっぷりのMCも楽しみです。

実はMCは苦手なんですけど、せっかく関西でやるんだから、関西らしく盛り上がれるようなライブや話ができたらいいなっていつも思っています。次のツアーもぜひ楽しみにしていてください。


文:服田昌子

 

LIVE INFORMATION
藍井エイル 2020/05/06(水) 16:30 なら100年会館大ホール
藍井エイル 2020/06/07(日) 16:30 神戸国際会館こくさいホール